子どもがなにかできるとつい言ってしまう「すごいね、よくできたね!」という褒め言葉。「えらいね!」「すごいね」といった褒め言葉は、子どもにとってはとても中毒性のある言葉ですよね。私も子どもの頃に経験があるのですが、親や先生にまた喜んでほしい…と周囲の大人の喜ぶ顔を見ることが、勉強を頑張る動機にすり替わってしまうことも。また、産後はホルモンのバランスが崩れますし、それでなくとも育児の疲れやストレスでついついワ〜〜〜ッと言いすぎてしまいます。叱った後で「言いすぎちゃったかな…」と反省することもしばしばです。
そこで今回、手に取ったのが島村華子著「自分でできる子に育つほめ方・叱り方」です。
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島村華子「モンテッソーリ教育・レッジョ・エミリア教育を知り尽くしたオックスフォード児童発達学博士が語る 自分でできる子に育つほめ方・叱り方」レビュー
Amazon「子育て」部門で売れ筋1位の育児書を読んでみたら、売れてるワケがわかった気がした
Amazonの「子育て」のカテゴリで長らく上位にいる本がありました。
しかもキャッチには「モンテッソーリ教育」の文字が。内容もいまの自分にドンピシャだったので、さっそくポチッとしてみました。
構成は以下の通り。
第1章 親の声かけ次第で、子どもは変わる
第2章 自分でできる子に育つほめ方
第3章 自分でできる子に育つ叱り方
第4章 子どもとつながる聞く習慣
第5章 こんなとき、どうすればいい?Q&A
ざっくり分けると前半が「ほめ方」、後半が「叱り方」という構成になっています。それぞれにはシチュエーション別の想定問答も付いているので、こんなときどう伝えればいいんだろうという疑問も解消される構成になっています。また、意外と興味深く読んだのが第4章の「子どもとつながる聞く習慣」。子どもとの接し方に迷いがある方は、この章だけでもぜひ読んでみてください。子どもの声に耳を傾け、親子のコミュニケーションがより濃いものになるよりよい向き合い方が紹介されていました。第5章のQ&Aでは「子どもの偏食、どうすればいい?」「祖父母による甘やかし。どう対応すればいい?」など、具体的な悩みに関する対処方法なども読むことができます。
図星すぎてグサグサくる
○わぁ!上手だね!
○えらいね!
○すごいね!
○やめなさい!
○触っちゃダメ!
○早く〜〜しなさい!
これらは、本書で引かれていたほめ方・叱り方のNG例の一部。
自分に当てはまりすぎて本書を読みながら吹き出してしまったのですが、大人になるとはっきり注意してくれる人ってなかなかいないもの。薄々気づいていた自分の失態を本に指摘されることは、なんだか爽快な気分でした。また、お、これはこの言い方でよかったんだなというものもちらほらあったりして、これまでのほめ方・叱り方で方向転換すべき部分とこのまま継続すべき部分とを理解し、整理するきっかけにもなったように思います。
モンテッソーリ教育に則した声かけの方法がわかる
著者の島村華子さんは、オックスフォード大学で児童発達の修士、博士過程を修了。現在はカナダの大学で幼児教育の教員養成に携わる幼児教育の研究者です。モンテッソーリ国際協会(AMI)の教員免許を取得されているほか、モンテッソーリ以外のオルタナティブ教育にも興味を持たれているとのこと。レッジョ・エミリア教育にも通じており、本書はモンテッソーリとレッジョ・エミリアという2つの教育法における”子どもへのまなざし”をベースに書かれています。
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いきなり個人的な話になりますが、近隣のモンテッソーリの幼稚園の説明会に参加した際、園長先生がこんなことを言っていたのを思い出しました。
「服が汚れたら着替えればいい。こぼしてしまったら拭けばいいんです」
これを聞いたとき、視界がパァーッと開けたような気持ちになったのをよく覚えています。園長先生のこの言葉はごくごく当たり前の内容ではあるのですが、長時間ワンオペで子と向き合っていると、なかなか思い至らない境地のように思います。(だからモンテッソーリ教育の現場にはしばしば子ども用の小さな布巾が用意されていて、こぼしたら拭くという行動を子どもたちが自ら行えるようになっています)
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話を戻しましょう。本書の筆者は、こんなことを言っていました。
「よい子」とは、どんな子どもでしょうか。静かに大人の言うとおりに動き、ルールにしたがう子でしょうか。
島村華子「自分でできる子に育つほめ方・叱り方」
(中略)
日本だけでなく海外でも、電車やバスで泣かない赤ん坊に、大人が「静かにしてえらいね。いい子だね」と話しかける場面をよく目にします。
(中略)
実際には本来の成長段階にあった行動をとっているだけなのに、多くの人々が無意識に求めているのは、大人に「迷惑」をかけない子どもでいることなのです。
これって、さきほど挙げた園長先生の言葉にも通ずるところがあるような気がします。服を汚して怒ってしまうのは大人が着替えさせる手間が増えるから。ごはんをたくさんこぼしたのを叱ってしまうのは大人の掃除の手間が増えるから。結局、大人が主体になってしまっているんですね。
そうではなく、子どもを自立した一人の人間として接する。筆者の言を一部引用すると「子ども一人ひとりを生まれながらに能力をもち合わせたパワフルな学習者であるだけでなく、権利をもった一市民としてみな」す。これがモンテッソーリとレッジョ・エミリアに通底する考え方であると言います。本書の根底にある思想は子どもを尊重すること。本書はこの基本的な考え方に、親たち、大人たちを立ち戻らせてくれる一助になるのではないでしょうか。
読了してからすぐはつい叱ってしまうこともあったのですが、「あ、こう言えばよかったかな」とか「次はこう伝えてみよう」などと具体的に反省し、次にいかすことができるようになったようになった気がしています。また、「すごいね」と褒めることが必ずしも悪いことではないと書かれていたのにも救いがありました。極端すぎず、中身も読みやすいので子どもが寝静まった時間でさっと読めたのもよかったです。
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・「すごいね!」と褒めることが多い
・叱ったあと後悔することが多い
・モンテッソーリやレッジョ・エミリアアプローチの考え方に共感する部分がある
・ほめ方・叱り方のバリエーションを増やしたい
お子さんとのコミュニケーションに迷うことがあったら、ぜひ手に取ってみてくださいね。